セルフ・コンパッション

Definition of Self-Compassion – セルフ・コンパッションとは

MSCは、MBSRと同じく仏教の教えを元に、しかし宗教的な要素を
とりいれずに作られたプログラムです。両プログラムとも仏教や瞑想を教えることを目的としたプログラムではなく、また心理療法やカウンセリングでもありません。

MSCには特に「癒す」要素が多く入ったプログラムですので、このプログラムを受講すると、うつ病が治った、不安症が低減した、家族との関係が良くなったなど、様々な生活改善を及ぼす効果が出ることは確かです。

MSCは困難な状況に陥った自分自身と向き合い、その対応に必要な、感情的な資源、スキル、強さ、包容力を育むことを目的とし、その育むプロセスを重視しています。

MSCプログラムを作り上げた二人の博士のうちの一人、クリスティン・ネフ博士は、セルフ・コンパッションについて三つの要素をあげて説明しています。(参照: Center for Mindful Self-Compassion

この三つの要素についての要約をご紹介する前に、マインドフル・セルフ・コンパッションの、言葉と背景について少し説明を付け加えたいと思います。

マインドフルネスという言葉は、Mindfulnessをカタカナにしたものですが、このMindfulnessはサンスクリット(パーリ語)でのsatiを訳したものです。このsatiの意味は、漢語で表すと「念」です。また仏教の実践においては「正念」で、八正道の一つです。つまりマインドフルネスの意味は、「念」や「正念」として、良い悪いなどの判断、価値観を加えずに、気を向ける、気づく、また、物事をそのありのままの姿で受け入れる、ということを意味します。

コンパッションは、Compassionを訳すと慈悲心、思いやりとなります。ここでのCompassionはサンスクリットのkarunaの訳で、この背景にも仏教の四無量心「慈、悲、喜、捨」があります。ダライ・ラマの言葉を紹介すると「Compassion is the wish for all beings may be free from suffering.」「全ての人へ、自身からの苦しみがなくなりますように」という願いの要素を含みます。

セルフ・コンパッションの三つの要素

自分への優しさ (Self-Kindness)
辛い思いをして苦しみ悩んでいる自分に対して、大切な友人へと同じように、優しい気持ちを持って対応をする、その要素がセルフ・コンパッションの要素の一つです。
セルフ・コンパッションを持つ人は、失敗や自分の不完全、不十分さは、人間として無くせない、避けられないことと理解します。
この現実を認められないと、苛立ち、自己批判をする要素が増加します。この人間として避けられない現実を、思いやりを持ち、優しい気持ちで受け入れらると、「平静」な状態につながるのです。

共通の人間性 (Common humanity)
不完全な人間としての自己経験を、人間として当たり前、逃れられない、とみなし、自分だけではなくみんな同じように辛い思いをするんだと捉えることができる、共通の人間性、これが二つ目の要素です。
失敗をしたり、困難な状況の中で苦しんでいる時に、何か誤ったことをしてしまったとか、こんなはずではない、と感じ、自分にどこかおかしなところがあるのではないか、とアブノーマルを感じることがあるかもしれません。セルフ・コンパッションを持つ人は、そんな時に「自分だけでない」と孤独感とは逆で、周りに目を向けることができます。

マインドフルネス (Mindfulness)
自分自身の感情的の傷みに優しく対応するためには、まず自分が苦しんでいると、知る(認める)必要があります。マインドフルネスは自分の傷みに目を向けて、苦しんでいる状態の自分をありのままに受け入れる、この要素が三つ目のセルフ・コンパッションの要素です。
cherry_blossomマインドフルネスはバランスのとれた「気付き」「認知すること」。自分が感じていることを抑えようとしたり、無視しようとしたりせず、また自分の置かれた状況に対して、ドラマティックに、過激に反射行動しないことに繋がります。